経営診断とは、自社の財務・組織・営業などの状態を第三者の目で点検し、課題と打ち手を整理することです。中小企業であれば、この経営診断を無料で受けられる窓口が複数あります。
中小企業庁の「中小企業白書」でも、経営課題の把握と外部支援の活用が業績改善に寄与することが繰り返し指摘されています。しかし実際には、無料の窓口があること自体を知らないまま、課題を抱え込んでいる社長が少なくありません。
本記事では、無料で経営診断を受けられる5つの方法と、費用相場、AIを使った自社診断との使い分けまで解説します。どこに相談すればいいか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の結論
経営診断は商工会議所・よろず支援拠点など5つの窓口で無料で受けられる 有料の診断は10万〜100万円が相場。無料窓口とAI診断を先に使うのが合理的 AI診断は無料窓口の「予習」に使うと、限られた面談時間の価値が上がる経営診断とは?中小企業が受けるべき3つの理由
経営診断とは、財務・営業・組織・業務の4領域を数字と事実で点検し、優先して手を打つべき課題を特定する作業です。健康診断の会社版と考えるとわかりやすいでしょう。多くの公的窓口では、決算書3期分をもとに1〜2時間の面談で実施されます。
中小企業の社長が経営診断を受けるべき理由は、大きく3つあります。
理由1:自社の課題は社長ひとりでは見えにくい
毎日同じ現場にいると、問題が「当たり前」に見えてきます。粗利率が業界平均より10ポイント低くても、それが自社の常識であれば疑問を持ちません。
第三者が同業他社の数字と比べることで、初めて「ここが弱い」とわかります。診断の価値は、答えを教えてもらうことより、比較の物差しを手に入れることにあるといえるでしょう。
理由2:融資・補助金の審査で有利になる
金融機関や補助金の審査では、事業計画の裏付けが問われます。経営診断を受けて課題と改善計画を整理しておけば、その説明に説得力が生まれます。
特に「経営革新計画」や「経営力向上計画」の認定を受けると、日本政策金融公庫の低利融資や税制優遇の対象になります。これらの計画づくりは、無料の経営診断窓口で相談できる範囲です。
理由3:打ち手の優先順位が決まる
社長の悩みは常に複数あります。人手不足、新規開拓、資金繰り、後継者。すべてを同時に解決することはできません。
診断を通じて「今期はここに集中する」と1つに絞れると、社員への指示も明確になります。診断の本当の効果は、やることを決めることより、やらないことを決められる点にあります。

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経営診断を無料で受ける5つの方法
経営診断を無料で受けられる窓口は、大きく5つあります。いずれも国や自治体、公的機関が費用を負担しているため、中小企業側の自己負担はゼロ、または年会費のみです。以下で1つずつ見ていきましょう。
方法1:よろず支援拠点(完全無料・回数制限なし)
よろず支援拠点は、中小企業庁が全国47都道府県に設置している無料の経営相談窓口です。国の事業として運営されているため、相談料は一切かかりません。
最大の特徴は、相談回数に制限がないことです。1回きりのアドバイスで終わらず、施策を実行しながら継続して相談できます。売上拡大、資金繰り、事業承継など、テーマを問わず相談できる点も使いやすさにつながっています。
コーディネーターには中小企業診断士、税理士、ITの専門家などが在籍しています。相談内容に応じて適任者が対応するため、「まずどこに相談していいかわからない」という段階でも使いやすい窓口です。
方法2:商工会議所・商工会の経営指導員

商工会議所と商工会には、経営指導員という専門職員が常駐しています。会員であれば無料で経営相談を受けられ、決算書をもとにした財務分析も依頼できます。
年会費は事業規模によりますが、年間1万〜3万円程度が一般的です。この会費だけで、経営相談に加えて小規模事業者持続化補助金の申請サポート、共済制度、各種セミナーまで利用できます。
地域の実情に詳しい点も強みです。同じ商圏の他社の動向や、その地域独自の補助金情報が得られるのは、地元密着の窓口ならではといえるでしょう。
方法3:金融機関の経営支援サービス
取引のある地方銀行や信用金庫でも、無料の経営診断を受けられる場合があります。金融庁が金融機関に対して「事業性評価」を促していることもあり、取引先の経営支援に力を入れる金融機関が増えています。
決算書のデータを使った他社比較レポートを無料で提供している金融機関もあります。融資審査とは別の相談窓口として使えるため、まずは担当者に「経営相談の枠はありますか」と聞いてみるとよいでしょう。
ただし、金融機関は融資が本業です。診断の視点が資金面に寄りやすい点は理解しておく必要があります。
方法4:中小企業診断士の無料相談会
各都道府県の中小企業診断協会が、定期的に無料相談会を開催しています。1回30分〜1時間程度と時間は限られますが、独立した専門家の意見を直接聞ける機会です。
中小企業診断士は、経営コンサルティングに関する国家資格です。財務、生産管理、マーケティング、情報システムの各分野を横断的に学んでいるため、経営全般の相談相手として適しています。
時間が短いぶん、事前準備が結果を左右します。決算書と「何を相談したいか」を1枚にまとめて持参すると、限られた時間で具体的な助言まで踏み込めます。
方法5:AI経営診断ツール(24時間・無料〜低価格)

近年増えているのが、AIを使った自社診断ツールです。決算数値や業務の状況を入力すると、業界平均との比較や改善ポイントを自動で提示してくれます。
最大の利点は、いつでも何度でも試せることです。予約も移動も不要で、深夜でも構いません。「相談窓口に行くほどではないが、現状を整理したい」という段階に向いています。
UWANでも無料のAI診断を提供していますが、実際に使った社長からは「言語化できていなかった課題が文章になった」という声が多く挙がります。人に相談する前の頭の整理として機能している形です。
| 方法 | 費用 | 所要時間 | 継続相談 | 向いている段階 |
|---|---|---|---|---|
| よろず支援拠点 | 無料 | 60〜90分 | 制限なし | 課題が明確で実行まで伴走してほしい |
| 商工会議所 | 年会費1〜3万円 | 60分程度 | 可 | 補助金申請もあわせて相談したい |
| 金融機関 | 無料 | 60分程度 | 担当者次第 | 資金繰り・財務が主課題 |
| 診断士相談会 | 無料 | 30〜60分 | 原則1回 | 専門家の第三者意見が欲しい |
| AI診断ツール | 無料〜数千円 | 5〜15分 | 何度でも | まず現状を整理したい |
有料の経営診断はいくら?費用相場を比較
無料の窓口だけで足りない場合、民間のコンサルティング会社や独立した中小企業診断士に依頼することになります。単発の経営診断で10万〜50万円、月次で顧問契約を結ぶ場合は月額5万〜30万円が相場です。
費用の差は、診断の深さと関与期間で決まります。決算書分析だけなら安く、現場ヒアリングや社員面談まで含めると高くなる構造です。
| 診断の種類 | 費用相場 | 期間 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 財務分析のみ | 10万〜20万円 | 2〜4週間 | 決算書3期分の分析・業界比較 |
| 総合経営診断 | 30万〜50万円 | 1〜2ヶ月 | 財務+現場ヒアリング+改善提案書 |
| 事業計画策定 | 50万〜100万円 | 2〜3ヶ月 | 診断+中期計画+数値計画 |
| 月次顧問契約 | 月額5万〜30万円 | 6ヶ月〜 | 定例面談・実行支援 |
| AI診断+伴走 | 月額3万〜15万円 | 3ヶ月〜 | 自動診断+改善の実行サポート |
なお、専門家派遣制度を使えば有料の診断も費用が下がります。多くの自治体が中小企業診断士の派遣費用を補助しており、自己負担が3分の1程度になる制度も珍しくありません。地元の産業振興課に確認してみましょう。

AI経営診断でできること・できないこと
AI経営診断とは、決算数値や業務の状況を入力すると、課題と改善案を自動で提示する仕組みです。人が数日かけていた分析を数分で終えられる一方、判断が必要な領域では人にはかないません。得意・不得意を理解して使い分けることが重要です。
AIが得意な3つの領域
1つ目は、数字の比較と異常値の発見です。 業界平均と自社の数値を並べ、大きく外れている項目を瞬時に洗い出せます。人間なら見落とす小さな変化も拾い上げます。
2つ目は、網羅的なチェックです。 財務、営業、人事、業務の各領域を漏れなく点検できます。人の診断はどうしてもその人の得意分野に寄りますが、AIは均等に見ます。
3つ目は、選択肢の洗い出しです。 「この課題に対する打ち手を10個」と指示すれば、社長が思いつかなかった案も含めて並べてくれます。判断材料を増やす用途では非常に有効です。
AIが苦手な3つの領域

1つ目は、現場の空気を読むことです。 「この施策はうちの社員の性格には合わない」といった判断はAIにはできません。組織の人間関係や過去の経緯は、数字に表れないためです。
2つ目は、実行の伴走です。 AIは正しい提案を出しますが、それを実際に社内で動かすところまでは面倒を見てくれません。ツールを入れるだけでは変わらないのは、この点にあります。
3つ目は、責任を持った推奨です。 借入や人員整理のような重い判断で、AIは責任を負いません。最終判断は必ず社長と、信頼できる専門家が行う必要があります。
| 項目 | AI診断 | 人による診断 |
|---|---|---|
| 費用 | 無料〜月数千円 | 10万〜50万円 |
| 所要時間 | 5〜15分 | 2週間〜2ヶ月 |
| 網羅性 | 高い | 担当者の専門分野に依存 |
| 現場理解 | 低い | 高い |
| 実行支援 | ほぼなし | あり |
| 繰り返し利用 | 何度でも可 | 都度費用が発生 |
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失敗しない経営診断の受け方4STEP
無料の経営診断で成果を出す社長と、「何も変わらなかった」と言う社長の差は、準備と受け方にあります。相談時間の平均が60分であることを踏まえると、その60分をどう使うかが結果を分けます。以下の4ステップで進めてみてください。
STEP1:AI診断で現状を言語化する

いきなり窓口に行く前に、AI診断で自社の状態を整理します。5分程度で、課題の候補が文章になって出てきます。
この段階の目的は、正解を得ることではありません。「自社の課題を人に説明できる状態」を作ることです。ここを飛ばすと、面談の前半30分が状況説明で消えてしまいます。
STEP2:決算書3期分と相談内容を準備する
持参するのは、決算書3期分と、相談したいことを書いたA4用紙1枚です。相談内容は3つ以内に絞り、優先順位をつけておきます。
「売上を上げたい」ではなく「既存客の単価が3年で8%下がっている。どう止めるか」のように、数字を添えて書くのがコツです。具体的な質問には具体的な答えが返ってきます。
STEP3:窓口を選んで予約する
継続して相談したいならよろず支援拠点、補助金申請もセットなら商工会議所、資金繰りが主課題なら取引金融機関。目的で窓口を選びます。
どの窓口も予約制が基本で、繁忙期は2〜3週間先まで埋まっていることがあります。決算後や補助金の公募時期は特に混み合うため、早めに動きましょう。
STEP4:次の一手を1つに絞って持ち帰る

面談の最後に、必ず「では、来月までに何をやればいいですか」と確認します。診断が失敗に終わる最大の原因は、提案が多すぎて何も実行されないことです。
UWANが伴走した従業員20名の建設会社では、この「1つに絞る」を徹底し、見積作成の自動化から着手しました。結果として月30時間の事務作業が削減され、その時間を営業訪問に回せるようになっています。

自社に合う診断方法の選び方
どの方法を選ぶかは、自社の状況で決まります。「とりあえず全部試す」のは時間の無駄になりやすいため、以下の判断軸で1つに絞ってから動きましょう。
課題がまだ言葉にできていない場合
「なんとなく調子が悪い」という段階なら、まずAI診断です。無料で何度でも試せるため、失うものがありません。
出力された内容を見て「これは違う」「これは当たっている」と選別するうちに、課題の輪郭が見えてきます。その状態で窓口に行けば、面談の密度が格段に上がります。
課題は明確で、実行を助けてほしい場合
よろず支援拠点が第一候補です。相談回数に制限がないため、実行しながら軌道修正できます。「やってみたがうまくいかない」という相談ができる窓口は、実は多くありません。
補助金や融資とセットで考えたい場合
商工会議所か取引金融機関を選びます。診断と申請書類の作成を同じ窓口で進められるため、二度手間になりません。
特に小規模事業者持続化補助金は、商工会議所の確認書が申請要件になっています。最初から商工会議所を経由するのが効率的です。
経営を変える覚悟があり、費用も出せる場合
有料の顧問契約が選択肢に入ります。無料窓口は月1回程度の面談が限界ですが、顧問契約なら週次で伴走してもらえます。
ただし、いきなり有料契約に進む必要はありません。無料窓口を2〜3回使ってみて「もっと踏み込んだ支援が必要だ」と感じてからで十分間に合います。
| 自社の状況 | おすすめの方法 | 理由 |
|---|---|---|
| 課題が言語化できていない | AI診断 | 無料・即時・何度でも |
| 課題は明確、実行支援が欲しい | よろず支援拠点 | 回数制限なしで伴走可能 |
| 補助金・融資も検討中 | 商工会議所/金融機関 | 診断と申請を一元化できる |
| 専門家の意見だけ聞きたい | 診断士無料相談会 | 独立した第三者視点 |
| 本格的に経営を変えたい | 有料顧問契約 | 週次レベルの継続支援 |
経営診断でよくある失敗3パターン
無料の経営診断を受けたのに成果につながらないケースには、共通する型があります。実際に相談現場で起きている3つの失敗パターンを知っておくと、同じ轍を踏まずに済みます。
失敗1:報告書をもらって満足してしまう
診断の成果物は分厚い報告書です。読むと納得感があり、何かをやり遂げた気持ちになります。
しかし報告書は地図であって、移動そのものではありません。診断を受けた翌週に1つでも動き出しているかどうかが、成果の分かれ目になります。
失敗2:課題を全部同時に解こうとする
診断を受けると、たいてい10個以上の課題が挙がります。すべてに手をつけようとして、結局どれも中途半端に終わるパターンです。
効果が大きく、着手が容易なものから1つずつ潰していきましょう。3ヶ月で1つ確実に片付けるほうが、10個を同時に始めるより前に進みます。
失敗3:社長だけが理解している状態で終わる
面談に社長ひとりで行き、内容を社内で共有しないまま終わるケースです。社員から見れば、社長が突然新しいことを言い出したようにしか見えません。
可能であれば幹部を1名同席させるか、面談後に診断結果を15分でも共有する場を持ちましょう。AIは道具であり、使いこなすのは人です。診断も同じで、動かすのは現場の社員だという前提を忘れないことが大切です。
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よくある質問
経営診断は本当に無料ですか?追加費用はかかりませんか?
よろず支援拠点と中小企業診断協会の相談会は完全無料で、追加費用は発生しません。商工会議所は年会費(年1万〜3万円程度)が必要ですが、相談自体は無料です。金融機関の経営支援も相談料は無料が一般的です。有料に切り替わる場合は必ず事前に説明がありますので、その場で確認しましょう。
赤字続きの会社でも相談していいのでしょうか
むしろ赤字の会社ほど相談する価値があります。公的な支援窓口は経営改善が本来の目的であり、業績を理由に断られることはありません。資金繰りが厳しい場合は、経営改善計画の策定支援や、返済条件の変更に関する助言も受けられます。早い段階で相談するほど選べる手段は多くなります。
AI診断と専門家の診断、どちらから始めるべきですか?
AI診断から始めることをおすすめします。無料で5分程度、何度でも試せるため、着手のハードルが最も低いためです。そこで自社の課題を言語化してから専門家に相談すると、60分の面談を状況説明ではなく解決策の議論に使えます。順番を逆にすると、貴重な面談時間の半分を現状説明で消費してしまいます。
相談内容が外部に漏れることはありませんか?
公的支援機関の相談員には守秘義務が課されており、相談内容が第三者に共有されることはありません。中小企業診断士も、中小企業支援法により守秘義務を負っています。AI診断ツールを使う場合は、入力データの扱いについて利用規約を確認しておくと安心です。個人情報や取引先名を入れずに、数値と業種だけで診断する方法もあります。
診断を受けてから効果が出るまでどのくらいかかりますか?
着手する内容によりますが、業務の自動化や事務作業の削減といった内部改善であれば1〜3ヶ月で数字に表れます。一方、新規顧客の開拓や商品開発は6ヶ月〜1年を見ておく必要があります。最初に短期で効果が見える施策を1つ選ぶと、社内の納得感が得られ、その後の改善が進めやすくなります。
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まとめ:まずは現状を言葉にすることから始めよう
経営診断は、よろず支援拠点、商工会議所、金融機関、中小企業診断士の相談会、AI診断ツールの5つの方法で無料または低コストで受けられます。有料の診断が10万〜100万円かかることを考えると、これらを使わない手はありません。
重要なのは、診断を受けること自体ではなく、その後に1つでも実行することです。課題を10個並べるより、3ヶ月で1つ確実に片付けるほうが、経営は前に進みます。
まずは今週、決算書3期分を手元に用意して、自社の粗利率が3年でどう動いたかを確認してみてください。その数字ひとつが、最初の相談の入り口になります。

